気候変動に関する枠組み条約(UNFCCC)
科学上及び技術上の助言に関する補助機関第28回会合(SBSTA28)
及び関連会合出席報告

海洋研究開発機構
地球環境フロンティア研究センター
近藤洋輝

1.はじめに

気候変動枠組み条約(UNFCCC)補助機関第28回会合(SB28)—「科学上及び技術上の助言に関する補助機関第28回会合(SBSTA28)」と「実施に関する補助機関第28回会合(SBI28)」の2分科会から成る—は、平成20年6月4日〜13日の日程で、また、関連する会合である、「条約の下での長期的協力の行動のための特別作業部会第2回会合(AWG-LCA2)」及び「京都議定書の下での附属書㈵国の更なる約束に関するアドホック・ワーキング・グループ第5回再開会合(AWG-KP5 part 2)は平成20年6月2日〜12日、いずれもドイツ・ボンで開催された。

SB28では、気候変動枠組条約・京都議定書の着実な実施や関連する各種方法論につき議論され、また、AWG-LCA2とAWG-KP5 part 2では、ポスト京都(2013年以降)の気候変動に関する国際枠組みに係る議論が行われた。

日本からは、小町恭士地球環境問題担当大使、大江博外務省国際協力局参事官、本部和彦経済産業省審議官、島田久仁彦環境省国際調整官、皆川芳嗣林野庁次長他、外務、文部科学、農林水産、経済産業、国土交通(気象庁を含む)、環境各省関係者が参加した。

文部科学省からは、海洋地球課地球・環境科学技術推進室の藤森英俊担当官と参与の小職が、SBSTA28の主要部分(担当の小分科会の討論の全てと全体会合の前半部)及び、AWG-LCA2、AWG-KP5 part 2の一部に参加した。気象庁からは、地球環境業務課の吉田隆地球温暖化対策官がSBSTA28などに出席した。小職は、ナイロビ作業計画(NWP)の下での「モデリング、シナリオ、ダウンスケーリングに関するインセッション・ワークショップ」で、NWPの日本の研究機関のフォーカル・ポイントである小職はこの間の活動を簡単にプレゼンしたほか、世界銀行が主催したサイドイベントでパネラーとして参加した。

以下、主にSBSTAの議題6「研究と組織的観測」に関する小分科会(Contact Group 及びInformal Consultation)での議論の他、公電に基づく全体の議論、及び小職がプレゼンした、上記NWPのワークショップ、世銀のサイドイベントに関し、報告する。

2.ポスト京都の国際枠組み

2-1. AWG-LCA2の討論

  1. 今次第2回会合では、「適応」、「技術」及び「資金」に関するワークショップを開催するとともに、バリ行動計画(バリ・ロードマップ)の5つの要素(「共有のビジョン」、「緩和」、「適応」、「技術」及び「資金」)について議論された。我が国は、各ワークショップにおいて日本の基本的考え方、具体的取組等につき説明し、議論の進展に貢献した。また、世界の温室効果ガス排出を2050年には少なくとも半減するとの長期目標の共有を主張するとともに、9日に福田総理大臣より発表された新たな政策ビジョンに沿って、我が国自身の長期目標として現状から60〜80%の削減を掲げて取り組んでいく意志を表明した。

  2. 議長は、提案を締約国から求めるため、今次会合では今後の次期枠組みの検討の素地となる締約国からの具体的な意見提出のテーマ等について合意を得たいとし、これらにつき議長より提案された案を基に議論が行われ、結論を得た。これにより、COP15(2009年末)に向けて注力していく論点について方向性が得られた。今後、先進国の更なる約束に係る交渉の場であるAWG-KPにおける作業との補完性を念頭に置きつつ、2つの作業部会の進捗がバランスのとれたものとなるよう、本交渉プロセスの下での作業を着実に進めていく必要がある。
  3. 来年の作業計画については、来年は少なくとも4回の会合を持つことにつき合意するとともに、追加会合の開催の必要の有無につきCOP14(2008年末)までに決定することとされた。

2-2. AWG-KP5 part 2の討論

  1. 本年4月の前回会合に引き続き、附属書㈵国が排出削減目標を達成する手段の分に関し、特に以下の項目について議論した。
    ㈰議定書の下での柔軟性措置(京都メカニズム)
    ㈪土地利用・土地利用変化及び林業部門(LULUCF)の取扱い
    ㈫カバーすべき温室効果ガス、セクター及び排出源のカテゴリー
    ㈬セクター別アプローチ
    今次会合では初日にラウンドテーブルが開催され、意見交換が行われた後、3つのコンタクトグループ(分科会)に分けて、議論が進められた。また、本会合から、人為的排出の計量方法と温室効果係数(GWP)の議論が開始され、ワークショップが開催された。今次会合では、これら事項の様々な改善策について、各国から提案された様々な見解を議長の責任の下でまとめたリストが作成され、その内容について、8月の次回会合で検討することとされた。
  2. 我が国の見解
    我が国からは、

    クリーン開発メカニズム(CDM)などが、現状は世界全体の排出削減につながらないこと、持続可能な開発に貢献していないこと、開発のコベネフィットが評価される仕組みが必要であること、事務局の効率的運営が必要であること、

    森林の取り扱いルールの検討においては、IPCC第4次評価報告書にあるように、長期的には持続可能な森林経営が最大の緩和効果を生じさせることから、そのような取組を促進させるルールが必要であること、

    セクター別アプローチは国内外において、対策の公平性を確保する観点からも、効果的な削減を進める観点からも重要であること、国際航空・海運からの排出については、国際民間航空機関(ICAO)、国際海事機関(IMO)が議論をリードすべきこと

    等の意見を表明した。
  3. 討論の評価
    今次会合では、附属書㈵国が排出削減目標を達成する手段について、各国から様々なオプションが出されたが、実質的な議論までには入らなかった。次回の会合では、今次会合でとりまとめたリストを考慮して、附属書㈵国が排出削減目標を達成する手段の分析について結論を出す予定であり、我が国の考え方に理解が得られるよう、次回会合までに十分な準備を行う必要がある。なお、セクター別アプローチについては、今回我が国から発表を行い、国別総量目標設定のための科学的な知見を提供すること、セクター毎の利用可能な最善の技術を明らかにし国際的に削減を進めることについて一定の理解を得ることができた。

3.SBSTA議題6「研究と組織的観測」について

3-1.SBSTA全体会合(6月4日<水>午後のセッション)

SBSTA全体会合において、議題6に関する討論は6月4日午後に行なわれた。

まず事務局から、今回の議題の背景説明が行なわれるとともに、SBSTA26(2007年)の結論に基づいて「条約のニーズに適切な研究活動の進展に関する非公式な討論」が6月5日午前に行われることが通知され、参加が呼びかけられた。議題に関する各国からの一般的な見解の表明が、サウジアラビア、日本、中国、ニウエ、米国、ブラジル、ベネズエラからなされた。

我が国は、IPCC第4次評価報告書で、依然不確実性の残る課題や、明らかになった最新知見から生じた新たな課題に対応して、昨年4月に立ち上げた「21世紀気候変動変化予測革新プログラム」において長期予測、近未来予測、極端現象予測などを通して取り組み中であるとして紹介すると共に、今後さらに締約国と研究組織との連携が必要である点などを述べた。

各国見解では、特に、サウジアラビアが、議題の背景として、「世界食料安全に関する高官会合(ローマ、2008年6月3−5日)」を取り上げ、バイオ燃料生産の増加が食糧生産を圧迫して高騰をまねき、貧困層に影響与えている点を強調した。米国やベネズエラが、SBSTA26の結論による、非公式な、締約国と研究組織との対話の重要性を強調した。

議長は、アーサー・ロール(Arthur Rolle、バハマ)セルジオ・カステッラーリ(Sergio Castellari、イタリア)を共同座長とするコンタクトグループを設置すること、討論の結果は、6月13日にSBSTA全体会合に報告することを提案し、異論なく合意された。

3-2. 第1回コンタクトグループ会合(6月6日<金>12:30〜13:00)

共同座長から、議論の進め方として、前日開かれた、「条約のニーズに適切な研究活動の進展に関する非公式な討論」を反映して両座長から提示された検討点、特に、IPCC第4次評価報告書(AR4)、地域気候センター、研究プログラムに関する情報、ダウンスケーリング、データの質と欠損、研究政策、今後の展望などについて、意見が述べられた。

SBSTA全体会合での各国見解と上記の意見交換の結果とに基づき、共同座長が案文を作成することと、それに基づいて、6月7日(土)に非公式協議を行なうことが合意された。

3-3. 第1回非公式協議(6月7日<土>15:00〜18:00)

共同座長から提示された案文に基づいて討論が行なわれた。基本的には、締約国と国際的・地域的研究組織との対話の推進、同研究組織からの最新知見の紹介の重要性など、これまでの議論を反映した内容であったが、我が国からは、新たな知見から生じた課題など、今後研究を一層進めなければならないニーズが生じていることを強調すべきであるとの見解を述べた。また、途上国グループからは、人材育成を盛り込むべきとする意見が述べられたが、本議題では討議する内容ではないということから合意が得られなかった。その他、語句上の改良などの意見が述べられた。

第2回の非公式協議は、上記を反映した修正案を6月9日(月)までに共同座長が作成して継続することとなった。

3-4. 第2回非公式協議(6月9日<月>16:30〜18:00)

修正案文では、我が国が第1回非公式協議で述べた点について改善が見られたがなお、「重要な課題が認識された」というに止まっていたため、さらに表現の追加を求め、「締約国や研究組織が、その課題に取り組む努力をさらに強化することを奨励した」という文章を追加するよう発言して合意された。また、途上国からは、「SBSTAはナイロビ作業計画の実施下で同定された、適応努力を支援する研究活動を強化する必要性を指摘した」における、「指摘した」では弱いとして、「強調した」を提示し合意された。ほぼ全体が合意されたが、共同座長は再修正案文を翌10日(火)に提示して第3回非公式協議で決着を図ることになった。

3-5. 第3回非公式協議及び第2回コンタクトグループ会合6月10日<火>16:30〜18:00)

共同座長再修正案文は、語句の表現・編集上の修正を加えた上で合意に至り、第2回コンタクトグループ会合としても合意して、SBSTA全体会合に報告することとなった

3-6. SBSTA本会合

共同座長から、6月13日(金)午前のSBSTA本会合セッションにおいて、コンタクトグループからの結論案文が報告され、特段の異議なく承認された。研究と組織的観測からもたらされる科学的知見が、すべての気候変動対策の基盤として重要である旨、議長は指摘した。

4.その他のイベントについて

4-1. ナイロビ作業計画(NWP)関連のインセッション・ワークショップ

SBSTAインセッション・ワークショップ:「気候変動の影響、脆弱性、及び適応に関するナイロビ作業計画(NWP)の下での、気候モデリング、シナリオ、及びダウンスケーリング」が6月7日にSBSTA議長の司会の下で開かれた。IPCCやWCRPの代表は、特に途上国の地域的あるいはより局地的な気候シナリオに向けた、地域気候モデルやダウンスケーリングの手法や、能力開発に関する進展に触れた。また、UNDPからは、気候モデルの出力や、そこからのダウンスケールしたデータをより政策決定者に適切にする実際的な手順に関して発表した。個々の研究機関などからは、特にユーザーと開発担当者との対話、政策決定者のニーズに取り組む重要性、リスク管理の手法、全範囲にわたるシナリオの利用、異なる時間スケール、地域センターの効用などについての報告などが続いた。

NWPの日本における研究組織のフォーカル・ポイントを担当している小職は、UNFCCCの事務局からの要請で、「Regionally Detail Climate Modelling Applied to Adaptation Studies(適応研究に活用した、地域的に詳細な気候モデリング)」の題で、地球シミュレータによる気候モデル結果を活用した、途上国の適応研究への協力に関するこの間の日本の活動に関し報告した(http://unfccc.int/4377.php 参照)。具体的な協力の報告は他になかった点もあり、反響があった。

4-2. 世界銀行のサイドイベント

世界銀行は、6月5日に「気候変動に対する適応の実施:ラテンアメリカにおける活動」という題でサイドイベントを開いた。世銀の担当者であるベルガーラ(Walter Vergara)、カリブ域気候変動センター(CCCCC)のレスリー(Kenrick Leslie)所長などのほか、日本から、小職と気象研究所の鬼頭気候研究部長がパネラーとなって参加した。小職は、ラテンアメリカ、カリブ海域の適応研究に対する、地球シミュレータによる気象研グループの研究成果を通しての日本の協力について報告した。

所感


今回は、昨年末インドネシア・バリで開かれた、COP13をフォローアップして具体的に議論する最初の機会であり、各国それぞれの立場からの見解が示されたが、まだ議論は出始めたところという印象である。昨年のドイツ・ハイリゲンダムのG8サミットで我が国からの提案に基づき、米国も含め「2050年に少なくとも排出を半減させることを検討する」ことが合意され、さらにCOP13では、ポスト京都に対し、米国も含む先進国も、中国・インドを含む途上国も参加する新たな枠組みを2009年末のCOP15までに策定するというバリ・ロードマップ(バリ行動計画)が採択されたわけであり、今年の洞爺湖でのG8サミットが次の山場になると考えられる。

昨年のG8サミットを受け、我が国は、世界の温室効果ガス排出を2050年には少なくとも半減するという長期目標の共有を主張した。さらに、会期中の6月9日に福田総理大臣より新たな政策ビジョンが発表された。そこで、我が国は、自身の長期目標として現状から60〜80%の削減を掲げて取り組んでいく意志が表明され、昨年のバリ会議で、数値目標を出さないとの批判をあるNGOから浴び、「化石賞」というありがたくない賞をいただいたが、今回はそれに応える形になったと感じる。

SBSTA議題6の「研究と組織的観測」に関しては、財政当局が、もはや温暖化に関する科学的知見は十分出揃って、いまや対応策に資源を向けるときだという、懸念すべき傾向がみられ、安定化のための排出削減の数量的な議論に向けては、科学的により確実な基礎が必要であり、炭素循環のフィードバックを始め、新知見からもさらに取り組まなければいけない課題が生じている。その辺の状況を踏まえて、わが方からは、研究ニーズがさらに強まっており、一層研究努力を強化すべきことが読めるような形に結論案が出せたのは幸いである。また、途上国の研究能力向上につながるような協力も重要であることについても異論はなく合意された。

ナイロビ作業計画(NWP)に関わるワークショップでは、我が国からの報告が最も具体的な途上国への協力活動を示していることから、関心が寄せられた。終了後も数カ国の代表から質問を受けた。この面については、革新プログラムの下でも、人的資源の可能な範囲内で対応を継続することが重要であると考えられる。


 

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