気候変動枠組条約第13回締約国会議(COP13)および、
京都議定書第3回締約国会合(COP/MOP3)出席報告

地球環境フロンティア研究センター
             近藤洋輝

1.はじめに

バリ気候変動会議(Climate Change Conference): 気候変動枠組条約第13回締約国会議(COP13)、京都議定書第3回締約国会合(COP/MOP3)は、平成19年12月3〜15日(会期は1日延長)にインドネシア・バリ島で開かれ、

会場となったBali International Convention Centre (BICC)

初日から当初最終日の予定であった14日まで文部科学省参与として出席した。具体的には、期間中、両会議の全体会合、及び気候変動枠組み条約の分科会として開かれた、科学上及び技術上の助言に関する補助機関第27回会合(SBSTA27)に文部科学省参与として出席すると共に、10〜14日に関しては、地球環境フロンティア研究センター(以下、FRCGCという)に委託された、文部科学省の「21世紀気候変動予測革新プログラム」紹介の日本政府枠展示のブースで、会議の合間に解説を担当した。その他、FRCGCも研究機関として参加している、ナイロビ作業計画(NWP)に関する会合として、同フォーカルポイント・フォーラムが12月10日に開かれ、小職はFRCGCのフォーカルポイントとして出席した。
 条約事務局の発表によると、気候変動会議の参加者は、192カ国、国際機関、非政府機関(NGO)など413機関、メディア531団体などの総数10,828名となり、過去最多の参加者数となった。京都議定書の10周年の会議であり、第1約束期間(2008年〜2012年)を目前に控えていることや、2013年以降の次期枠組みに関する議論が高まっていること、また、IPCCや米国のゴア元副大統領のノーベル平和賞受賞もあいまって、会議には世界的な関心が集まった。

今回、全体の主要な議論は、ポスト京都(2013年以降)の将来枠組みをどうするかであって、議長を務めた開催国のビトエラー(Rachmat Witoelar)環境大臣のリードの下、合意に達した結論は、2009年までの行程表である、バリロードマップとしてまとめられた。

以下、全体の主要な会議結果であるバリロードマップ、及び会期中直接関わった、SBSTA27の議題6、議題7、NWP会合、展示について報告する。なお、事実関係からや整合性に関してENB(国際持続的発展研究所(IISD)が出す会議特報(Earth Negotiations Bulletin)) や公電を参考とした。
また、非公式協議に関しては、原則として、国名は非表示にした。

オープニングセレモニー 挨拶をする潘基文(パン・ギムン)国連事務総長

各国の閣僚がStatementを発表

京都議定書に批准したことで話題となったオーストラリア
Penny Wong大臣(Minister for Climate Change and Water)
鴨下環境大臣(日本)

2. バリロードマップ

ポスト京都の将来枠組みに関する議論は、難航を極めたが、会期を1日延長して議論を継続し、ユドヨノ・インドネシア大統領、バン・ギムン国連事務総長が出席して、各国の歩み寄りを呼びかけ、議論を午後まで行った結果、どうにか合意に達した。すなわち、IPCC第4次評価報告書(以下、AR4という)から、「気候システムの温暖化は疑う余地がない」や「排出削減の遅滞は、より低い安定化レベルを達成する機会を制約し、より激しい気候変化影響のリスクを増大させる」を引用し、AR4が気候変化に対応する緊急性を指摘していることを強調した上で決議の内容に入るというものである。それまでの案文で引用されていた「AR4によれば、安定化レベルのカテゴリーに向けては、温室効果ガスの全球排出を今後10 〜15年でピークにし、そして2050年までに2000年の排出より十分半分以下にする必要がある」や「先進国は2020年までに1990年基準で全体として25〜40%という大幅な排出削減をする必要がある」など、数値目標に関わるような表現は削除された。しかし、米国を含む先進国も、インドや中国を含む途上国も枠組みに含み、2009年までに策定することが合意された。そのためには、数値目標は、引用も控えるとともに、途上国の持続可能な開発への技術協力を取り込むということで、ようやく合意に達した。

具体的には、既存の「付属書㈵国*の京都議定書下での将来枠組みに関する、アドホック・ワーキング・グループ」(AWG on Further Commitments for Annex㈵parties under the Kyoto Protocol)に加え、枠組条約の下に、新たに「付属書㈵国に対する枠組み条約下での長期共同実施に関するアドホック・ワーキング・グループ」(AWG on Long-term Cooperative Action under Convention)を設置し、2013年以降の枠組みを2009年までに策定すること等に合意した(*注:先進国及び旧ソ連圏経済移行国)。その際の考慮点として:

  • 排出削減に関するグローバルな長期目標の検討、
  • すべての先進国による計測・報告・検証可能な緩和の約束又は実施(先進国間の取り組みを比較できるようにする)、
  • 途上国による計測・報告・検証可能な緩和の実施、
  • 森林、
  • セクター別アプローチ、
  • 削減と適応における条約の媒介的役割の強化、
  • 小島嶼国などの脆弱な国への支援に関する国際協力、
  • 革新的技術開発の協力、
  • 資金協力
などが明記・確認された。

3.SBSTA27

3.1 議題6: 研究と組織的観測

日本から、竹林敏之文部科学省地球・環境科学技術推進室室長補佐、栗山育子同省地球・環境科学技術推進室科学技術・学術行政調査員、文部科学省参与として小職、里田弘志気象庁地球環境業務課地球温暖化対策調整官が出席した。

(1) SBSTA全体会合(12月4日)

事務局から、今次会合に提出された文書(全球気候観測システムによる「全球気候変動観測システムについてのUNFCCCへの報告に関するガイドライン改定案」(FCCC/SBSTA/2007/Misc.26)、全球陸域観測システムによる「気候の陸域観測システムのガイダンス文書、標準及び報告ガイドラインの構築における進捗報告」(FCCC/SBSTA/2007/Misc.27))について説明された。

続いて、GCOSを代表して、GCOS推進委員会のジルマン(John Zillman、WMO)委員長から、GCOSの今後の活動の方向性に関する今次会合への情報提供として、以下の報告がなされた。

  • GCOS実施計画の実施を通じて、地球温暖化への適応策のためのナイロビ作業計画に貢献すること、
  • 報告ガイドラインに関するGCOSによる改定案の採択を提案する。
  • GTOSによる陸域観測に関する提案を支持する。
  • シドニーで開催されたIPCC AR4に関する合同ワークショップにおいて得られた教訓を生かすべきである。
  • 特に開発途上国における現場観測の能力向上の支援について緊急に対処する必要がある。
  • GCOS実施計画において、各国による実施やCEOS・GCOSの協働が進んでいる。

また、GTOSを代表して、GTOS事務局ラーサム(John Latham、国連食糧農業機関)から、

  • 陸域観測システムは発達が遅れている。
  • 今回GTOSを改善するための枠組みに関する三つのオプション*を提示する。それを通じて観測標準を統一することが重要である。
  • 陸域観測拡充のための資金が必要であることについて報告があった。
*注): 後述の非公式協議において、別途下記のように説明が行われた:
オプションA:陸域に関する政府間合同委員会方式
海洋におけるWMO/IOC海洋学・海洋気象学合同委員会(JCOMM)と同じように、FAO、UNEP、WMO等のGTOSのスポンサーである国際機関間の合同委員会を形成。
オプションB:国際標準化機構(ISO)の下での陸域委員会方式
ISOの技術管理ボード(Technical Management Board)の下に、気候変数に関するGTOS/GCOS合同の推進グループを設置。
オプションC:陸域観測に関する調整メカニズム方式
IPCC、GEO等のマンデートを拡張することなどによる調整メカニズムを設置。オプションAに類似。

続いて、各国からGCOS事務局及びGTOSから提出された文書に対するコメントを中心に 見解表明があった。
日本からの見解:IPCC AR4の成果及び気候変動の影響評価、適応等における観測の役割は大きい。SBSTAにおいて、締約国及び観測コミュニティー間の対話によって国際的な地球観測システムを促進する議論を加速させる必要がある。GCOS及びGTOSの貢献に感謝。GEO閣僚サミットが開催され、UNFCCCに対するGEOSSの貢献に言及する宣言文が採択された。GEOSSによるUNFCCCへの貢献について、SBSTAがGEOに報告を求めることを提案する。今日の観測技術は格段に進歩している。我が国では、宇宙技術の進歩によって森林減少の観測が強化された。今後温室効果ガス濃度及び気候変動の監視を更に拡充する予定。将来枠組みの議論は、先端観測技術等から得られる強固な科学的基礎に基づくべきであり、我が国は最新の科学的知見の提供に貢献していきたい。

その他の国の見解表明は省略するが、GCOSの報告ガイドラインに関する改定案に関しては、基本的に異論はなかったが、GTOSの提案に関しては、新たな調整組織を作ることに対する懸念が一部の国から表明された。SBSTAとしては、ロズナー(Stephan Rosner、ドイツ)レソール(David Mmile Lesolle、ボツアナ)を共同議長とする非公式協議において、SBSTA結論案の検討が行われることとなった。

(2) 非公式協議における議論(12月5〜8日)

非公式協議では、GCOS及びGTOS代表から詳しい提案説明があった。これに対して、WMO等の他の国際機関との調整状況や、実施のための資金の必要性や、新たな調整組織設置等について疑義が寄せられた。上述のオプションの選択をSBSTAが行うことについて各国が賛同しなかったこともあり、SBSTAとしてはGTOSが実際に今後枠組の構築を検討する際の基本的方向性ついて議論することとなった。 その他に、我が国の見解の中で述べられた、「GEOSSによるUNFCCCへの貢献について、SBSTAがGEOに報告を求める提案」や「将来枠組みの議論は、先端観測技術等から得られる強固な科学的基礎に基づくべき」について文書案の議論も行なわれた。前者に関しては、SBSTAは、全く独立の枠組みである、GEOに対して報告を求める立場にないことなどを理由として受け入れられなかった。しかし、後者に関しては、「先端観測技術」に関しては異論がなかったが、その出口としての、「ポスト京都の議論にむけて」、あるいは「将来枠組みのために」のような表現は限定的であるとして、一般的な「気候変動に取り組むために」に固執する途上国から異論が出て紛糾した。結局、字句の調整が行われ、最終的な合意が計られた。

(3) 合意された結論

非公式協議での合意内容(決議案及び結論)は以下の通りである:

  • 全球気候観測システム(GCOS)の提案に基づき、気候の全球観測システムをUNFCCCに報告する際のガイドラインの改定決議案をCOP13に提案する。
  • 全球陸面観測システム(GTOS)が中心となって構築する気候の陸域観測システムに関する標準、ガイダンス文書等の準備枠組みの基準等が合意された。
  • 地球観測衛星委員会(CEOS)によるGCOS実施計画の進捗が評価されるとともに、地球観測に関する政府間会合(GEO)第4回地球観測サミットにおいてUNFCCCに対する全球地球観測システム(GEOSS)の貢献に言及した宣言文が採択されたことが歓迎された。
  • IPCC第4次評価報告書(AR4)の成果や気候変動の影響評価、適応等に向けた取組に対する科学的知見の提供において観測(特に先端的観測技術)が果たす役割の重要性等について確認した。
上記の非公式協議結論は、SBSTA全体会合(12月11日)において、共同議長からSBSTA結論案(FCCC/SBSTA/2007/L.14)及びCOP13決議案の概要が報告され、細部の技術的な修正のもとに承認された。COP13決定案は、COP全体会合において、原案のとおり承認された。

3.2 議題7:IPCC第4次評価報告書(AR4)

日本から、里田気象庁地球温暖化対策調整官、文部科学省参与の小職、栗山文部科学省調査員、西尾産業技術研究所エネルギー社会システムグループ長が出席した。

(1) SBSTA全体会合

12月4日のSBSTA全体会合では、各国から、IPCCのノーベル平和賞受賞を祝し、IPCC/AR4の意義とその努力を称え、その上で各国の立場からの見解表明が続いた。以下、主な見解を記すと:

  • EU代表(ポルトガル):
    AR4以降の新知見に関する特別報告書の2009年前半までの作成をIPCCに依頼すべき(ノルウェー、コロンビア支持)。
  • スイス:
    AR4をベースに、地球温暖化の上限を2℃とするために、世界の排出量を2050年に半減し、二酸化炭素濃度を550ppmに安定化することが必要。
  • ロシア:
    緩和・適応策の経済的評価に関する研究を伸ばすべき。
  • ツバル:
    小島嶼国に特有な脆弱性に関する統合報告書が必要。

SBSTAとしては、本義題に関しては、ヴァン・イペルセール(Jean-Pascal van Ypersele de Strihou、ベルギー)エルジゾウリ(Ismail A. Elgizouli、スーダン)の共同議長の下で非公式協議において検討が行われることになった。

(2) 非公式協議における議論(12月5〜10日)
提示された議長草案

各国見解から浮かび上がった主な論点は、今後AR4をどのように条約及び議定書で活用するか、またCOPとしてIPCCの今後の活動に何を求めるかについてであった。そこで、それらに基づいて共同議長から示されたSBSTA結論案では、

  • IPCCに対して、必要に応じて、特定の議題に関するさらに絞った報告を求める。
  • 次回のSBSTA28会期中にAR4に関するワークショップを開催する。
  • 同ワークショップに先立ち、AR4に対する各国の見解及び条約及び議定書に資するためのIPCCの活動についての見解の提出を各国に求めること、
が盛り込まれていた。

一方、COP決議案の草案の内容は、

  • IPCCに対する謝辞と、AR4の情報を十分活用(make full use of)するよう各国へ呼びかけること。
  • IPCCに対して、将来の評価報告書において、科学的、技術的、社会・経済的な情報の評価と更新に努めるよう依頼する。
  • 最貧国及び小島嶼国の脆弱性に関する技術報告作成につき検討を依頼する
となっていた。

以下、協議での主な論点をまとめると:

■ワークショップの性格

先進国の一部は、各国の関心事項に関するAR4の記述についてのブリーフィングを受け、情報や意見の交換を行うべきであり、今後のSBSTAやSBIの議論につなげたいとした。

一方、他の一部先進国や、途上国の一国は、ワークショップは関係する情報の交換に留めるべきで、今後新たな議題の設立につながるようなことには反対した。

また、別の先進国の一国は、事務方の負荷が過重になることからワークショップの開催自体に否定的。

上記途上国の一国は、「見解の交換」や「COPによる報告書の検討」が将来枠組みの政策論議に向けた動きとなることに非常に警戒的であった。

■IPCCへの資金拠出の継続

途上国は、資金拠出を呼びかける「各国」は「特に付属書I国」と限定的に書くべきとする一方、先進国の一国は「すべての加盟国」に対する呼びかけとすべきであると主張。

議長は「そのような立場にある加盟国」への呼びかけとすることを提案し、かなりの先進国が支持した。

また途上国は、IPCC活動への途上国の参加促進のためIPCCの資金を使うようIPCCに求めるとの記述を要求したが、かなりの先進国はIPCCの活動に干渉するような記述は入れるべきではないとの立場から反対。

■IPCCの成果の活用

一部の先進国は、AR4を、条約や議定書の議論にどのように生かせるかを、SBSTAで特定する作業を行うべきとしたが、他の先進国の一部及び途上国の一国は、個別議題で考えればよい事項であり、そのような作業は不要と主張した。

SBSTA結論案及びCOP決議案の改訂版の提示

その内容は、

  • ワークショップは関係する情報の交換に留める、
  • 資金拠出の呼びかけは「そのような立場にある加盟国」への呼びかけとする、
  • AR4を、条約や議定書の議論にどのように生かせるかは個別議題で考えればよい事項である
という形になった。大多数は議長提案を受け入れたが、途上国の一国のみは、議長案が1.AR4から特定事項を拾い上げている、2.途上国のIPCCへの参加促進の記述が盛り込まれていない、3.ワークショップの目的に「見解の交換」が残っており、目的が不明確 の三点を理由に議長案に反対して譲らず、SBSTA全体会合で議論することになった。

(3) SBSTA全体会合による非公式協議再開と結論

12月11日午後再会されたSBSTA全体会合では、非公式協議の共同議長から、協議の状況が報告され、若干の審議の上、SBSTA議長は、非公式協議の再開を求めた。

直ちに再開された非公式協議では、

  • ワークショップの目的から「見解の交換」を削除、
  • IPCCへの拠出促進を、特に附属書I国に求めるなど、途上国よりの修文を採用
  • 共同議長提案のうち、「AR4の情報を十分に活用する(make full use of)」に関し、途上国の一国が、この段階で、AR4の内容は不確実であり「注意深く用いる(make cautious use of)」と修正すべきであると主張。我が国から、AR4は知見の確実性についても評価しており十分活用する必要があると述べた。結局、「十分(full)」を削除する妥協が図られ、全加盟国が同意に達した。 同日夜のSBSTA全体会合で、最終結論案(FCCC/SBSTA/2007/L.20/Rev.1)及びCOP決議案(FCCC/SBSTA/2007/L.20/Add.1/Rev.1)が採択された。後者は、COP全体会合に提案され採択された。

4.ナイロビ作業計画(NWP)フォーカルポイント・フォーラム

12月10日午後のセッション前の2時間ほどの時間に開かれた。司会のSBSTA議長クマーシン(Kishan Kumarsingh、トリニダード・トバゴ)から歓迎の意とNWGの意義についてふれた挨拶の後、UNFCCC事務局から、NWPについての実施状況などについて説明がなされた。

NWPはCOP12(2006年、ナイロビ)で採択された計画で、「全ての締約国、とりわけ、後発途上国(LDC)及び小島嶼途上国(SIDS)を含む開発途上国が、現在及び将来の気候変化と気候変動性を考慮しながら、影響・脆弱性・適応に対する理解と評価を進展させ、確実な科学・技術的、社会経済的な基盤に立った、気候変動対応の施策や、実際の適応実施の決定について周知されるよう、支援する」ことを目的にしている。NWPに参加を表明した、国際機関、非政府機関、研究機関は、現在91にのぼる。しかし、多くは、国際機関である。UNEP、国連大学、国連国際防災戦略(UNISDR)などの国連機関、の専門機関から、世界銀行、

会合は、それぞれの機関の対応状況(ここの詳細は省略)についての情報交換で時間がきた。FRCGCからは、すでに日本の関連機関の情報をまとめ、日本のモデリング研究と影響評価・脆弱性・適応の研究との連携について報告書を提出してあり、特に今回追加することはなかった。今回の会合では、今後の活動を進めていく上での相互情報交換という役割を果たす場としたかったようで、特別新たな提案や審議はなかった。

5.文部科学省展示

文部科学省の展示に関する詳細は、委託されたFRCGCで主に担当した、研究推進室林千絵事務推進スタッフの展示参加報告を参照されたい。

展示ブースの様子

所感

今回の気候変動会議は、国連事務総長自らも参加することで象徴されるように、温暖化問題が、国際政治の主要な課題になっている状況の下で、1万人をこす多数の参加者と、国際的な高い関心の下で開かれた。また、会期中に、IPCCが、アル・ゴア元米国副大統領とともにノーベル平和賞を受賞するというイベントに重なり、パチャウリIPCC議長と、アル・ゴア氏が受賞後に会場に現れるという画期的な場面があった。温暖化進行の現実化、人為的温室効果ガス排出に対する原因特定など重要なメッセージを出したAR4が議論のいたるところで指摘され、結論文書や決議文書中に引用された。科学の成果が、政策決定者の文書に反映される状況が目の前で展開した会議であった。

バリロードマップに行き着くまでには、1日会期を延長せざるを得ないほど困難なこう着状態に何度も陥ったが、議長の開催国環境大臣のリードの下、開催国大統領と国連事務総長の訴えも奏功した形で何とか決着がついた。当初の案では明記されていた、「2050年までに2000年の排出より十分半分以下にする必要性」や、「2020年までに1990年基準で全体として25〜40%という大幅な排出削減をする必要性」など、数値目標に関わる表現は結局削除されたが、米国も、インドや中国も含む将来枠組みを2009年までに策定することが合意されたのは、一定の成果というべきであろう。

SBSTAでの、IPCCの議論では、非公式協議において、ある途上国がIPCCのAR4の内容は信頼性が乏しいから、「十分な利用」は「注意深い利用」をすべきだという見解を示し、さすがに一座の人々を唖然とさせた。数千人の科学者が学術的に真剣に取り組み、それぞれの知見に関し、その信頼性を定量的な表現で評価していることに対する、重大な発言とも言える。丁度WG1のAR4/SPMの議論で、原因特定の知見で、very likely というのは、観測も、気候モデルも不十分な下で問題であるとして、very の削除に固執した中国代表の見解に通じるものがある。上記の見解の固執が続いたため、結局、「十分な」を削除することで、何とか妥協が成立したのは、やむをえない。かろうじて最後は科学の立場が損なわれずに済んだといえる。

 

ページトップ / 1つ前にもどる / HOME