国連気候変動枠組条約(UNFCCC)
科学上及び技術上の助言に関する補助機関第24回会合(SBSTA24)出席報告

 
2006年5月
 
1.はじめに
 国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)補助機関(SB=Subsidiary Body)第24回会合(SB24)は、ドイツ・ボン市で平成18年5月18日〜26日に開催された。わが国政府代表団としては、外務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、および関連機関から、40 名が参加した。小職は、文部科学省参与として、SBの分科会であり、実施に関する補助機関 (SBI=SB for Implementation)とともにSBを構成する、科学上及び技術上の補助機関(SBSTA=SB for Scientific and Technological Advice)の第24回会合(SBSTA24)に関し、5月18日〜23日に出席した。文部科学省からは、地球・環境科学技術推進室の栗山科学技術・学術行政調査員が同期間出席した。

 SB24に先立って、5月17日からは、附属書㈵国の更なる約束に関するアドホック・ワーキングループ(AWG)がほぼ平行して25日まで開催され、京都議定書の第二約束期間(2013年以降)に関する審議が行なわれ、その初日に全体を兼ねるような開会式が行なわれたため、SB24としては、特に開会式は行なわず直ちに実質的な審議に入った。

 今回は、議題5(研究と組織的観測)についての審議に参加するとともに、SBSTA特別サイドイベントに、日本側のパネラーとして発表を行なったので、それらを主に報告し、他の議題も含む全体の成果については、政府代表団のまとめを記述する。

 
2.議題5(研究と組織的観測)に関連した審議について
2-1.概要

 SBSTAでは、UNFCCC締約国会議第11回会合(COP11カナダ・モントリオール、2005年)における決議9(Decision 9/CP11)*に基づき、地域的・国際的気候変動研究の活動を締約国に周知し、また締約国の研究ニーズ及びプライオリティを研究コミュニティに周知するため、条約に対応する研究ニーズについて定期的に審議することになっている。

 会議第1日目の18日の全体会合では、議題5に関し、我が国(栗山調査員)を含む数か国から見解表明がなされた。また、会議2日目の19日には特別サイドイベントが開催され、締約国代表(我が国からは小職)、気候変動に関する地域・国際研究プログラム代表が参加した。

 これらをふまえ、締約国と研究プログラム間の研究ニーズに関する対話をいかに促進するかを中心に議論がなされた。その結果、対話を更に促進するための方法について締約国・研究プログラムに意見を照会すると共に、SBSTA26において両者の非公式な議論の場を設置することが合意された。その他、地域研究協力ネットワークの強化、組織的観測の強化とデータ共有・統合の重要性、気候変動の科学的情報のアウトリーチの促進等が確認された。以下、上記の詳細について記述す
 
2-2. SBSTA全体会合(5月18日)
 冒頭事務局より、今次会合の事務局作成の2つの文書(研究ニーズに関する統合報告書FCCC/SBSTA/2006/INF.3、特定された研究ニーズに関する各国サブミッションのとりまとめFCCC/SBSTA/2006.MISC.3及びAdd.1)について説明があった。続いて各国より意見表明があり、統合報告書、特別サイドイベントを歓迎することが述べられた他、主要なものは以下のとおり:

我が国:重複を避け、制限のあるリソースを政策ニーズに応える研究に重点化し、効率的・効果的に研究を進めるべきである。そのためには、締約国、国際・地域的研究プログラム間の対話、連携、調整が重要であり、SBSTAはそれを促進すべきである。緩和・影響策検討の前提として、観測と研究に基づいた科学的知見の共有が重要である。また、効果的な途上国の能力開発、開発政策と統合した緩和・適応策の検討においてAPN等の地域的ネットワークの活用が重要。IPCCの課題の他、研究成果を緩和・適応策検討により適切にいかせるよう、地域規模・極端減少に焦点をあてた予測モデルの開発、多様な排出シナリオの下での多様な環境要因を考慮した長期予測、観測データの統合・同化、気候変動観測・研究データベースの構築が新規の研究ニーズである。また、気候変動研究の基盤として全球観測システムを促進すべきであり、条約の作業とGEOの活動の連携を促進すべきである。研究と観測の連携が重要であり、その具体化として気候変動研究等のニーズに合わせたデータ統合・解析システムの開発に着手している。

オーストリア(EU代表):気候変動研究に対する包括的なアプローチを発展させるべき。研究成果を緩和・適応策によりよく活用できるよう科学者と政策決定者間の対話を強化することもその一環。多様なGHG安定化レベルにおける全球・地域規模の影響及びリスク評価がプライオリティ。IPCCの作業を補完するものとして、国際的な研究プログラムとの対話の継続を希望。締約国のニーズへの対応について国際研究プログラムに報告を要請すべき。

オーストラリア:現在進行中の多様な国際研究プログラムの活動を通じて、気候変動研究活動のギャップが明らかになってきており、これらはIPCCの報告書に反映されている。研究者と締約国間の対話が重要。WCRPは気候変動について幅広く研究していることから、WCRPに対し現在の国際的な研究活動の評価を依頼し、SBSTAへ報告させることを提案。その他、APN、START等を通じた途上国の能力開発が重要。

ロシア:気候変動が実際に目に見える形で起こり、自然災害が生じている。全球地球観測に基づく早期警戒システムの構築が重要。観測点を増加し、タイムリーで信頼性の高いデータを収集できるようにすべき。その他、人為的排出に伴う影響に関する科学研究が重要。

米国:SBSTAによる研究ニーズの提示は研究者側のプリオリティ設定の参考となるが、研究者のボトムアップのアプローチも大切。両者の対話が重要。研究のプライオリティについては、地域規模のモデル開発、人為起源及び自然要因の気候変動との関連性に関する科学的不確実性の削減、緩和・適応策検討のための気候変動のコスト・ベネフィットに関する意志決定モデル、観測とデータ管理・共有の促進等、IPCC第3次評価報告書の課題が重要。SBSTAは、既存の地域・国際的研究組織との一層の連携促進を各国に強調することにより、既存データへのアクセスや途上国の能力に合わせたデータセットの作成等、研究能力向上のための具体的なプロジェクトの特定に貢献しうる。途上国の気候変動研究への貢献を低く見積もってはならず、途上国側も観測データの共有、観測能力向上の努力を促進すべき。

ツバル(小島嶼国連合(AOSIS=Alliance of Small Island States)代表):ロシアの主張のとおり、極端気象現象が頻発。気候変動と極端気象現象の関係に関する研究、極端気象現象の影響評価(頻度・強度の評価含む)、途上国の能力開発(特に人材交換が有益。小島嶼国を考慮)がプライオリティである。

中国:気候変動の科学的不確実性を低減することが重要。人為起源のGHG排出のアセスメントとその社会経済的影響評価、緩和・適応政策の影響評価、緩和・適応における研究開発の強化、国際協力の促進とそれを通じた途上国能力開発の促進が重要。

上記の意見表明、特別サイドイベントにおける議論を踏まえ、カステリャーリ(伊)及びシガラン(ペルー)を共同議長とするコンタクトグループにおいて、SBSTA結論案の検討が行われることとなった。

 
2−3.研究ニーズに関する特別サイドイベント(5月19日午後)
 SBSTA22の要請に基づき、気候変動に関する研究プログラムと締約国との間の対話の促進を目的とした特別サイドイベントが条約事務局主催で開催され、約60名の参加者があった。
第1部は、地域及び国際的な研究プログラム代表より、気候変動政策決定者のニーズへの対応、途上国の気候変動研究への参加促進の観点を中心に、各組織の研究プログラムの概要等が紹介された。国際的研究プログラムとして、WCRP、地球環境変化の人間社会側面に関する国際研究計画(IHDP=International Human Dimensions Programme on Global Environmental Change)、IGBP、地球システム科学パートナーシップ(ESSP= Earth System Science Partnership)、地域的研究プログラムとして、アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN=Asia-Pacific Network for Global Change Research、環境省関連)、北米および中南米地球変動研究所(IAI= Inter-American Institute for Global Change Research)、汎アフリカSTART (PASS=Pan African START(=Global Change System for Analysis, Research and Training、地球変動に関する分析・研究・研修システム)の各代表が発表をした。
第2部は、締約国の代表(日本、中国、米国、ブラジル、EU)より、締約国側の気候変動研究に対するアプローチという観点から発表があり、各国の気候変動研究プログラムの概要、研究のプリオリティ等が紹介された。我が国からは小職が、第3期科学技術基本計画における気候変動分野の推進戦略に沿った研究プライオリティ、国家基幹技術として開発を進める気候変動研究等のニーズに合わせて地球観測データを統合・解析するシステムの紹介を行った。
特別サイドイベントに日本を代表して参加する近藤特任研究員 (左か ら二人目)
 
2-4.第1回コンタクトグループ(5月19日)
 共同議長(イタリア)より、これまでの経緯、会合文書の説明等があった後、特別サイドイベントで抽出されたポイントが紹介された。研究プログラムに関するものとして、気候変動要因及び適応の研究、途上国研究者の能力開発、地域的協力、継続的な対話メカニズム、グローバルレベルでの研究者と政策決定者の対話促進におけるSBSTAの役割、共同の能力開発プログラム等があげられた。また、締約国の見解として、気候変動研究に関する統合的データベースシステム(我が国見解に基づく)、研究者と政策決定者の双方向の対話、能力開発、国際協力、気候変動問題の社会に対するコミュニケーションが提示された。これらへの対応の一案として、SBSTAの役割、緩和・適応策検討への気候変動研究からのアプローチ、国際研究プログラムとの連携、地域的協力ネットワークの活用(統合報告書で提示されていた論点)を議論することが提案され、締約国に対し一般的見解の表明が求められた。各国の見解以下のとおり。

カナダ:9/CP11に基づき、各国のサブミッション、統合報告書の作成、特別サイドイベントの開催が実施された。このように研究側と政策決定者との対話については既存のプロセスがあり、これ以上の検討はマンデートを越えるのではないか。
米国:国際研究プログラム間の連携や地域協力は既に進行している。SBSTAよりの新規の要求は費用負担の意味合いがあり望ましくない。既存のメカニズムで十分であり、新規の報告書作成も不要。
EU:特別サイドイベント、統合報告書ともinformativeであるが、双方が意見交換をする実質的な対話は十分できていない。ギャップを特定し、締約国のニーズと研究プログラムとを一致させる何らかの方法が必要。
オーストラリア:条約ニーズへの対応に関して国際研究プログラムによる研究活動の評価と報告を提案したが、これは各研究プログラムの内部評価であり、新規のリソースの必要性を意図しているものではない。
我が国:観測と研究の連携が重要。(EUの質問に対し)気候変動研究の統合的データベースとは、観測データ、モデル成果、適応・緩和研究の成果等を統合、共有するシステムである。
ロシア:気象センター等の各国の観測機関の強化が重要。また、観測にあたって、気候指標(climate indicator)が有用。
ボツワナ:研究能力の向上のためには、まず観測データ及びデータセットへのアクセス向上が重要。途上国における観測データの質及び量の低下を認識すべきであり、観測能力の向上を何らかの形で確認すべき。また、研究機関間のデータ交換、データ処理能力の向上も重要。
ベリーズ(G77&中国<途上国>代表):途上国特有の研究ニーズがある。極端現象と気候変動との関係と地域・全球規模の影響評価、国家及び地域の研究能力の向上、モデル成果の移転等。モデル提供に関する日本のカリブ、南米諸国への協力に感謝するがまだ不十分。データ保存が欠如している。データベースの構築と共に権威あるデータセットが必要。
モーリシャス:極端現象の問題について同意見。気候変動研究に取り組む能力がそもそも欠如。研究以前に、まず一定の品質で、容易にアクセスでき、共有された全球のデータセットが必要。
ジャマイカ:極端現象にニーズがある。研究への参加促進が重要。
シンガポール:まだ研究にギャップが存在。研究ニーズとしては、極端現象の頻度・強度、GHG排出シナリオの影響が有用。締約国の研究ニーズとの一致が必要。
ケニヤ:研究者と政策決定者の対話は不十分。情報が利用されるところまで達していないので、まず意見交換が必要。
サウジ:そもそも議論の目的が不明確。何を誰がどのように行うかロードマップが必要。

 上記を受け、共同議長(イタリア)より、SBSTA22以降、時間的な制約に鑑み、議題名はそのままであるが、研究と組織的観測は交互に議論をすることとなった旨説明され、今次会合は研究に焦点を当てることとなっているとの指摘があった。また、特に9/CP11のマンデートに基づき対話プロセスの進め方を検討するが、新規のプロセスを検討するのではなく、あくまで本決議に沿ったものであるべきことが述べられた。これらを踏まえて、共同議長が結論案を作成し、非公式協議、コンタクトグループを通じて検討することとなった。
 
2-5.第1回非公式協議及び第2回コンタクトグループ(5月20日)
 第1回非公式協議において、7つのパラグラフからなる共同議長作成の結論案が提示された。パラ1:統合報告書、関連サブミッション等の関連文書の確認。パラ2:特別サイドイベントにおいて、締約国及び研究プログラムより提供された情報を歓迎。パラ3:双方向の対話のため、特別サイドイベントに出席した研究プログラムに条約の研究ニーズへの対応状況の報告を要請。パラ4:途上国の研究能力開発における地域的研究ネットワークの役割の重要性を確認し、アフリカ地域におけるネットワーク設置の努力を確認、締約国による支援を奨励。パラ5:地域・国際的研究プログラムによる進捗、特に学際的アプローチを歓迎。地域を含む国際協力の進捗を歓迎。付属書I国に対し、途上国の研究能力向上を目的に途上国の参加促進の強化を要請。パラ6:締約国と国家、地域、国際的研究間の連携強化と、これらに対する9/CP11の実施の要請。パラ7:IPCC第4次評価報告書(AR4)は重要な研究ニーズを含むことを確認、締約国にこのニーズを満たすよう奨励、締約国に対しSBSTA28における検討のため、本ニーズを満たす成果について報告を招請。本案について、共同議長より、特定の研究ニーズに踏み込まない内容としたこと、COP11決議の要請に対応したパラグラフの構成をとっていることが説明された。本案を基に、各国よりまず全体的なコメントを述べた後、パラグラフ毎に審議を行った。
    議論の概要は以下のとおり。
  • パラ4はアフリカ地域のみに言及されているため、米国及びアジア・太平洋地域における既存の地域的研究ネットワークについて言及する。
  • パラ4とパラ5の内容は関連しているため、1つにまとめる。
  • 締約国と研究者間の対話は今次会合の中心的議題であるため、パラ6を膨らませてこの論点を扱う。
  • パラ7のAR4への言及は時期尚早のため、削除する。
  • 今次会合は研究に焦点を当てているものの、観測と研究との連携は重要であるため、組織的観測に関するパラグラフを追加する。
  • 気候変動の科学情報の一般社会へのアウトリーチ活動が重要であるため、これに言及するパラグラフを追加する。
第2回コンタクトグループにおいては、上記第1回非公式協議の議論を反映した6つのパラグラフからなる新たなドラフトが共同議長から提示され、全体コメントの表明に続き、パラグラフ毎に審議が行われた。
    議論の概要は以下のとおり。
  • 特別サイドイベントにおける研究プログラムからの情報提供に関しては、情報提供を歓迎することと、提供された情報を留意することについては、パラグラフを二つに分けることとする。
  • サイドイベントに関する研究プログラムからの報告書の提出に関しては、豪・加から本来の意図を超えるものではないかという指摘があったが、EUから強い要望に基づき、締約国ニーズとのギャップの特定、ニーズへの対応オプションの検討を含むものとする。
  • 地域的研究協力ネットワークについては、G77からの提案に基づき、締約国の支援のみではなく、更なる発展の奨励を追加する。
  • 組織的観測については、我が国からの提案に基づき、データの共有の重要性だけでなく、研究に適したデータセットへのデータ統合の重要性を追加する。また、G77の提案に基づき、組織的観測に対する支援、強化を締約国に求めることを追加する。
  • 科学情報のアウトリーチの重要性は、組織的観測と別のパラグラフで扱う。
  • 締約国と研究プログラムとの対話・協力の促進の必要性の留意と、対話促進のためのより効果的なオプションの探求は別のパラグラフとし、後者についてはそのプロセスを追加する。
 対話促進のプロセスについては、統合報告書、及び今次会合で開催された特別サイドイベントにおいては一方通行の情報提供にとどまり、締約国と研究側の意見交換に至らなかった反省を基に、締約国・研究プログラムよりの新たなサブミッション、より意見交換に時間をさいた研究プログラムも参加するサイドイベントの開催、ワークショップの開催等の提案があったが意見がまとまらず、各国で次回会合までに持ち帰り検討することとなった。
 
2-6.第2回・第3回非公式協議及び第3回コンタクトグループ(5月22日)
 第2回非公式協議においては、冒頭共同議長(ペルー)より、第2回コンタクトグループの議論を反映した9つのパラグラフからなる改定結論案について簡単な説明があり、本協議の論点として、特別サイドイベントに関する研究プログラムよりの報告書の提出先の明記(パラ4)、双方向の対話の定義の議論(パラ6)、対話の進め方に関するプロセス(サブミッション、ワークショップ等)の議論(パラ9)の3つが提示された。結果、パラ4及びパラ6についてはエディトリアルな修正提案が出されるだけに留まり、実質的な議論はパラ9に移された。

 対話の促進のプロセスに関して、今回特別サイドイベントで開始された対話のフォローアップを確保するため、研究プログラムも参加したサイドイベントやワークショップを開催することを希望するEUと、現段階ではサブミッションとSBSTAにおける議論で十分であり、それ以上の機会については今後の議論を待つべきで、今次会合で明確化することの意義に懐疑的なカナダが対立し、両者の妥協点をさがす議論が続いた。その結果、締約国・研究プログラムにサブミッションを求めること、SBSTA26において何らかの締約国と研究プログラムとの議論の場を設けることについて合意を得たものの、サブミッションについては対話方法だけでなく研究ニーズも論点として追加すべきかどうか、議論の場はどのような性格をもつものか、それぞれのタイミングは適切か、また、その次のステップについてどのように扱うか等が議論された。我が方、米、豪等よりIPCC第4次評価報告書(AR4)が2007年初旬に完成予定であることに鑑み、研究ニーズの議論はこれを踏まえて行うべきであり、SBSTA26にあわたせ2007年2月のサブミッションでは対話促進に集中して議論すべきことが述べられ、受け入れられた。一方、議論の場の性格については、新たなメカニズムの導入と受け取られかねないオプションは避けるべきという米の主張を前提に、非公式な議論の機会(informal discussion)とするカナダと a discussion meetingとし、あくまで会議形式であることにこだわるEUとが対立しこう着状態になった。一方、次のステップについては、EUがSBSTA28におけるワークショップの開催を検討すべきことを主張したのに対し、米・カナダは今後の議論を待つべきことを主張した。これらの対立点はオプションとして、ブラケットつきのまま第3回非公式協議に送られた。

第3回非公式協議においては、ブラケット付きのオプションについて引き続き議論が行われ、ワーディング中心に調整が行われた。非公式な議論の場の記述ぶりについては、わが方より折衷案として提案した”a meeting for an informal discussion”が、対立していた米・カナダを含む全体で支持された。また、今後のステップの明確化については、SBSTA28におけるワークショップの開催について「検討すべきことを留意する」という言いまわしで妥協が図られた。結果、引続いての第3回コンタクトグループにおいて、以下を概要とする結論案に合意した。
  • SBSTAは、特別サイドイベントにおいて提供された地域・国際的気候変動研究プログラムの情報を留意し、これらの計画に対し、SBSTA25(2006年11月)までに締約国の研究ニーズとのギャップ、対応のオプションを含む、報告書の提出を招請。
  • SBSTAは、途上国の研究能力開発における地域的協力ネットワークの役割の重要性を認識し、各国の支援を奨励。
  • SBSTAは、組織的観測のデータの品質・入手可能性・交換の改善、気候変動研究に適したデータセットへの統合の重要性。締約国の継続的な観測の支援、強化の必要性を確認。
  • SBSTAは、政策決定者・一般社会に対する気候変動の科学的情報に関するコミュニケーションを改善する必要性に留意。
  • SBSTAは、締約国と地域・国際的研究プログラム計画の対話及び協力促進を留意し、より効果的な対話の促進の検討に合意。この論点について、締約国、研究プログラムに対し、2007年2月までに意見を照会し、事務局に対し、SBSTA26(2007年5月)における両者の非公式な議論の場を設けることを要請。又、SBSTA28(2008年5月)において、研究ニーズに関する意見交換を深めるためのワークショップの開催を検討すべきことに留意。
 
2-7.SBSTA全体会合(5月26日)
 コンタクトグループでの討論が早期に決着したため、最終日の全体会合ではその報告を確認・承認するプロセスのみであることから、小職及び栗山調査員は24日に帰国の途に着いたが、26日の全体会合においては、コンタクトグループ共同議長からコンタクトグループとしてのSBSTA結論案(2-6参照)が報告され、特段の異論なくそのまま承認された。
 
3.全体の成果
 全体の議事に関しては、関連のAWGも含め、議題ごとに関連の省庁担当者が対応し、政府代表団全体の成果の概略についてのまとめは以下のように報告されている。
3−1 AWG及びSB24の主要な成果
  • 気候変動枠組条約第24回補助機関会合(SB24)では、各個別議題の下、気候変動枠組条約・京都議定書の着実な実施や関連する各種方法論につき議論が行われ、COP12、COP/MOP2に向けて議論が深まった。
  • COP11で決定された「気候変動の影響、脆弱性及び適応に関する5ヵ年作業計画」については、科学技術的な情報について理解を深めるため、計画の前半(今後2年間)の具体的作業の進め方について交渉が行われた。限られた人的・財政資源の中で効率的に作業を実施すべきとする先進国と、IPCCなど他の関連する取組みとは別に、補助機関(SBSTA)が独自の評価方法の開発まで行うべきなど、本作業計画に多くの期待を寄せる途上国との間で意見が対立し、SB25(第25回補助機関会合)で議論を継続することとなった。
3−2 個別議題での成果
(1) COP12、COP/MOP2のアレンジ
京都議定書第二回締約国会合(COP/MOP2)が気候変動枠組条約第12回締約国会議(COP12)に併せて11月6日から17日までケニア・ナイロビで開催されることが確認され、閣僚級会合の形式や議論の進め方などにつき、概ね締約国の間で合意された。
COP12、COP/MOP2では、議題を整理すると共に、基本的に毎日午後6時までに会議を終了させることとする等、より効率的な会議運営を目指すことが合意された。

(2)適応
 CDMプロジェクトの利益の一部(2%)等により運用されることとなっている「適応基金」については、同基金を管理する機関の選定基準などが論点となり、実績のある地球環境基金(GEF)が最適であると主張する先進国と、手続きの透明性や複雑さの点からGEFに異議をとなえ、予断を排してより多くの機関の中から選択すべきと主張する途上国グループが対立した。この結果、COP/MOP2までに、候補となる機関から意見を聴取することで合意された。
 COP11で決定された「気候変動の影響、脆弱性及び適応に関する5ヵ年作業計画」については、科学技術的な情報について理解を深めるため、計画の前半(今後2年間)の具体的作業の進め方について交渉が行われた。限られた人的・財政資源の中で効率的に作業を実施すべきとする先進国と、IPCCなど他の関連する取組みとは別に、科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA)が独自の評価方法の開発まで行うべきなど、本作業計画に多くの期待を寄せる途上国との間で意見が対立し、SBSTA25(第25回SBSTA会合)で議論を継続することとなった。

(3) 開発途上国問題
技術移転に関し、COP12で行う技術移転に関する専門家グループ(EGTT=Expert Group on Technology Transfer)の見直しにかかるEGTTからの勧告につき議論を行った。勧告には、既存の主要テーマを引き継ぐと共に、適応に関する技術についても検討すること等が盛り込まれている。この勧告を歓迎し、COP12での議論を促進するためSBSTA議長が事前に非公式協議を実施することで合意した。条約および議定書のキャパシティー・ビルディング(能力開発)については、資金拠出に関する情報等の提出、ワークショップの開催などが争点となったが、先進国・途上国間の調整が続き、次期会合まで持ち越されることとなった。

(4) 研究及び組織的観測(詳細は2.を参照)
 COP11決定に基づき、締約国と研究機関間の研究ニーズに関する対話をいかに促進するかを中心に議論がなされ、我が国を含む締約国、気候変動に関する地域・国際研究機関が参加して特別サイドイベントが開催された。対話を更に進めるための方法について締約国・研究機関に意見を照会すると共に、SBSTA26において、両者の非公式な議論の場を設置することが合意された。

(5) 吸収源対策
 開発途上国の森林減少を抑制することによる排出削減については、今年8月末に開催予定のワークショップの検討事項について議論が行われ、各国の経験・知見を共有すると共に、科学的、政策的側面について検討することが合意された。また、伐採木材製品(HWP)の取り扱いについてはSBSTA26において検討を継続することになった。

(6) 国際航空・海運からの排出に関する方法論
国際航空・海運からの排出量算定方法を改善するための今後の取り組みについて、技術的な情報交換を目的とするワークショップの開催等が検討されたが、一部途上国の強い反対により合意が得られず、SBSTA25で引き続き検討することとなった。

所感
 今回は、議題5のうち、研究を主題とする審議であった。特別サイドイベントでは、我が国が立ち上げたばかりの第三期科学技術基本計画において、再度重点化された環境分野の中でさらにどのような重点化をはかって、気候変動研究を進めようとしているかのほか、研究に密接な関連を持つ観測分野や、分野横断の国家基幹技術についても紹介した。

WCRPを含む、国際・地域研究プログラムからは、進行中の活動や最近の成果についての紹介があり、とくに、WCRPからは、JSC=Joint Scientific Committeeの委員長であるJohn Church(オーストラリア、CSIRO)が最近の温暖化の解析および予測研究の成果についての興味ある講演があったが、短時間なのが残念であった。討論時間が乏しかったことも審議の中で指摘され、SBSTA26では、より多くの時間を確保する方向で検討することになろう。

 議題5では、今回は、特に重大な異論が出る課題はなかった。しかし、コンタクトグループでの議論は白熱し夜遅くまで行なわれた。幸い根本的なあるいは深刻な対立に至らず、22日の深夜に至ったものの何とか決着がつき、予想より早い日程で、コンタクトグループとしての結論が全員一致で採択され、最後は拍手で終わる場面となった。この決着に至るこう着状態の最後の一段階で小職からの提案がいくらか役に立った点は有難かった。今後、AR4が出た時点から議論がさらに進むことが予想され、新しい情報を常に交換し、対話と連携を継続・発展させることが今後も重要と思われる。
 
以上

(報告:独)海洋研究開発機構 地球環境フロンティア研究センター 特任研究員 近藤洋輝)


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