気候変動に関する政府間パネル第25回総会(IPCC-XXV)参加報告

 
2006年4月
 
1. はじめに
 気候変動に関する政府間パネル第25回総会(IPCC-XXV)は、平成18年4月26(水)~28日(金)の3日間、モーリシャスのポートルイス市において開催された。出席者は118カ国の代表211名の他、以下の64名の計275名が参加した(参加登録リストによる):

 
 会場となったコンベンションセンター
(財)地球・人間環境フォーラム提供)
 
 (第25回IPCC総会において開会の挨拶をする
パチャウリIPCC議長)

IPCCビューロー:
    パチャウリ(Rajendra K. Pachauri) IPCC議長、
    ソロモン(Susan Solomon、米国)第一作業部会(WGⅠ)共同議長、
    クィン(Qin, Dahe、中国)WGⅠ共同議長
    パーリ(Martin Parry、英国)WGⅡ共同議長
    ディビッドソン(Ogunlade Davidson、シエラレオーネ)WGⅢ共同議長、
    平石尹彦(たかひこ)国別温室効果ガス・インベントリー・プログラム(NGGIP)タスクフォース(TFI)共同議長
    クラッグ(Thelma Krug、ブラジル)TFI共同議長
    マレンゴ(Jose Marengo、ブラジル)影響と気候解析のためのデータ及びシナリオ支援タスクフォース(TGICA)共同議長
    副議長団から、オディンゴ(Richard Odingo、ケニア)、イズラエル(Yuri Izrael、ロシア)、ムナシンゲ(Mohan Munashinghe、スリランカ)
IPCCガイドラインの責任執筆者(CLAs)、同推進委員会委員
国際機関、NGOの代表およびオブザーバー等
IPCC事務局、各専門支援室(TSU)

 日本からは、環境省地球環境局総務課研究調査室 塚本室長と経済産業省環境政策課 西尾課長補佐、関係機関から、(独)海洋研究開発機構/地球環境フロンティア研究センター 近藤特任研究員および秋庭推進室スタッフのほか、(財)地球・人間環境フォーラム(GEF)から2名、(財)地球産業文化研究所(GISPRI)から3名が参加した。

 今会合の主要な課題は、今後IPCCにおいて、気候変化予測をどう進めるかに大きく関わる、新排出シナリオについて審議することと、2006年の各国温室効果ガス・インベントリー(目録)に関するIPCCガイドラインについて、概要の採択(Adoption)及び本文の受諾(Acceptance)をすることであった(議題は別紙参照)。いずれも、コンタクトグループが形成され、本会議の合間及び後半には一部本会議と平行して審議され、近藤は新排出シナリオに関するコンタクトグループに参加した。 以下、議事報告である(手もとのメモに基づく。IISD : http://www.iisd.ca/ の資料も参考にした)。
  
2. 開会 (議題1)
 開催国のモーリシャス気象局のアッパデュ(S. N. Sok Appadu) 長官は、開会を宣言し参加者を歓迎した。

 パチャウリIPCC議長は、開催国に感謝すると共に、海面水位上昇の可能性や農業経済への影響などの観点からも、モーリシャスで開催する意義を強調した。また、IPCCメンバーが地元の科学及び政府関係の専門家と交流する機会など、IPCCの会議を異なる地点で開く利点に触れた。また、各国代表に対し、IPCCの将来の活動について検討し始める上で、議論を活発化するための新しいアイデアを考慮することを勧めた。

 世界気象機関(WMO)を代表し、ヤン(Hong Yan)事務局次長は、まず、モーリシャスの本会議に対する取り組みは、気候変動に対する挑戦であると述べた。彼は、今回の会議では、温室効果ガス・インベントリーのガイドラインと、新排出シナリオに関する今後の活動など重要な課題があることを指摘した。また、IPCCの手続きに関する審議では、WMOの2003年の世界気象会議における、IPCCの委任条項(terms of reference)の見直しを参考にしてほしいと述べた。さらに、IPCCが気候変動の科学に関して、信頼できる発信をするようになったことを述べ、COP/MOP1やCOP11における決議にはIPCCによる知見に基づくものがいくつかあったことを付け加えた。WMOの構成組織はいつでもIPCCに協力する用意があることを指摘した。

 国連環境計画(UNEP)を代表し、アルサ (Alexander Alusa)環境条約課長は、IPCCが気候変動の議論を発信し、協力的な活動を引き出す上で、経験をつんできたことを力説した。UNEPは、AR4の成果をできるだけ広範に普及させるよう支援する意向であることを強調し、UNEPの条約情報室ではすでに「二酸化炭素の回収と貯留に関する特別報告書」の簡約版を普及させていることを述べた。

 気候変動枠組み条約(UNFCCC)を代表し、トールゲルッソン(Halldor Thorgeirsson)事務局次長は京都議定書に基づく炭素市場が進展し、IPCCの活動がUNFCCCの政策課題に影響を及ぼしていることを述べた。科学と政策の相互作用という重要な領域に関しては、適応に関する5年実施計画や、森林伐採からの排出に対応するUNFCCCの提案に言及した。また、UNFCCCの下での、気候変動に関する長期協力活動についてのCOPの決議において、IPCCが引用されていることに注目した。

 開催国モーリシャスを代表し、バチュー(Anil Bachoo)環境・国家開発大臣は、IPCCに対し、地域的に適切な情報を開発途上国に提供することを強く要請するとともに、小島嶼開発途上国の生態系に対する気候変動影響の全体像は、情報や科学研究の不足から十分に理解されていない可能性があると警告した。

3.議題承認 (議題2)
 前回の総会(IPCC-XXIV)の議事録は特に異議もなく承認された。

4. 2006年の各国温室効果ガス・インベントリーに関するIPCCガイドラインの採択・受諾(議題4)
2006年の各国温室効果ガス・インベントリーに関するIPCCガイドラインの本文とその概要(Overview)に関しては、全体会合の討論でいくつかの疑問・異論が出され、その決着のためにコンタクトグループが形成されて別途審議され、全体会合に戻された。その結果、概要は節ごとの審議で修正のあと採択され、本文も受諾された。審議の詳細は省略する。ただ、今後の各国における温室効果ガスの吸収・放出(排出)に関するデータベースを構築するためのデータ作成にかかわる指針であり、科学・技術的に疑問を解消する必要があることや、国により利害に直接かかわることから調整は容易ではなかったが会期中に合意に達した。
採択された概要は12ページであるが、本文は5冊からなる膨大な内容であり、総論である、報告に関する一般的なガイダンスのほか、経済分野(エネルギー、産業過程)ごとの各論からなる。

5. IPCC排出シナリオに関するIPCCの今後の方針 (議題5)
前回総会(2005年9月)では、WGⅢによる新排出シナリオに関するワークショップ(Laxenberg、2005年6-7月)による、今後の進め方に関する3つのオプションの提示にもとづき、新排出シナリオに関するタスクグループ(TGNES=Task Group on Emission Scenarios)の設置による検討が決議された。今回は、TGNESの検討結果とともに、WCRPの結合モデル作業部会(WGCM=Working Group on Coupled Modelling)の部会長であるJohn MitchellからIPCC議長にあてた手紙も紹介され、審議となった。 TGNESの報告では、Laxenbergワークショップからの議論を発展させた結果として、シナリオ開発に関して3つのオプション:
 B1A:開発は研究者に任せる(自主的な組織化の有無は、いずれもありうる)。
 B1B:IPCCは、研究会からの調整メカニズムの確率を推進する上で関与―例えば、国際的研究枠組みであるWCRP、IGBP、IHDP(= International Human Dimensions Programme on Global Environmental Change <地球環境変化の人間社会側面に関する国際研究計画)などとの連携。スケジュール的に問題がないかが課題。
 B2:IPCCは、シナリオ開発の調整を行なう。
を示すとともに、TGNESとしては、B1BB2の選択が多数意見であったが、B1Aの少数意見もあったことから、現時点でオプションを選択せず、改めて新たな「シナリオに関するIPCCタスクグループ」を立ち上げて検討を続け、2007年5月の次回(第26回)IPCC総会に報告することを勧告している。
John Mitchellの手紙は、モデル開発の立場から上記報告の意味を示すとともに、補足的意見を述べたものであり、特に、「過去の排出シナリオに基づく全体的な気候変化に比べて地域的な気候変化の不確実性が大きいことから、不確実性をおおう2つか3つの異なる“ベンチマーク”排出シナリオより多くのシナリオに基づいてモデルを走らせることには、科学的に見てほとんど正当化するものはない。それらの中間の排出をもつシナリオは内挿して得られよう。」と述べ、その内挿は、第3次評価報告書で用いられた簡易モデルによることになろうとして、さらに、「これらの“ベンチマーク”シナリオは、本格的な評価に用いられる社会―経済シナリオとは独立のものである」と付記している。
 全体会合では、上記TGNESの報告とJohn Mitchellの手紙、及びそれらに基づいたIPCC議長からの提案に関して、各国からの意見が述べられた後、コンタクトグループにより別途討論した結果を持ち帰ることになった。
 全体会合、コンタクトグループの会議を通して、英国などは、TGNESの勧告通り新しいタスクグループを立ち上げるべきだとした。米国は、TGNESのB1Aが望ましく、B1Bまでは受け入れられるが、B2に対しては絶対受け入れられないという立場であり、2007年にこの件に関するIPCCの会議を開くことを提案した。また、サウジは、最初から、B1A以外はどのような案もありえない。IPCCは一切関与すべきではないという強い見解であった。
コンタクトグループ(共同議長:エルジズーリ(Ismail Elgizoul、スーダン)及びバン・イパーセル(Jean-Pascal van Ypersele、ベルギー))では、全体会合の合間だけでは時間がなく後半は全体会合の時間にかなり食い込んで平行して進行する討論となった。その結果、別紙2のようなコンタクトグループの提案がまとまり、全体会合で承認された。その結論は:
 IPCC議長は、各WGの共同議長の補佐により、2007年5月のIPCC総会(注:次の第26回総会、バンコックで開催予定)の審議に対し、IPCC技術報告書(Technical Paper)作成にむけた見通し調査文書(Scoping Document)を用意する。この技術報告書の役目は、AR4からの適切な材料をまとめ、その専門的な情報に基づいて、気候モデルグループによる利用の可能性に向けて少数の「ベンチマーク」排出シナリオを見出すことである。・・・この技術報告書は、現在のIPCCビューローの任期内(注:2008年の総会まで)に完成する。
 2007年の各WGによるAR4完成後に出来るだけ早く、新排出シナリオに関するIPCC会議を開く。IPCC議長は、そのための推進委員会(Steering Committee)を設置する。

6. 2007年から2009年のIPCCプログラムと予算(議題3)
 事務局から、資料の説明があり、2005年12月増す段階での予算状況が、8,533,823スイスフランで、10,000,000スイスフランに達していないのは残念であり、今後も各国からの拠出金の協力を呼びかけた。詳細に関しては、3日間にかけてファイナンシャルタスクチーム会合で検討され、最終日の本会合にて報告し採択された。
最終日の総会において、議長からドイツが本会合への資金供与を行うのかどうかの確認をした際に、ドイツ一国が担うのではなく、その他の国及びリソースからも資金供与を行うことになった。
主な修正点は 以下の2点:
  2007年の各種会合出席にかかわる途上国専門家への旅費支給の増額
 ドイツから提案されていた「再生可能エネルギーに関するIPCC特別報告書」に関するスコーピング会合への資金供与分の削除
7. IPCCビューロー及び各ビューローの選出に関する手続き(議題6)
   前回の総会で採択保留になった「Rule20」(IPCC議長、ビューロー及びタスクフォース議長の推薦者の定義)について検討した。括弧書きで、[ IPCC議長、ビューロー及びタスクフォース議長のポジションに推薦されるものは、帰属するIPCCメンバーである政府によって推薦されなければならない]という内容であり、括弧をはずし、採択することを主張したロシアに対し、スイス、アルゼンチン、オーストリア、フランス、米国、中国、オーストラリア、ドイツ、ベラルーシ、ノルウェー、カナダ、ケニヤ等多数の国が賛同し、Rule20を含むすべての選挙手順規則を採択した。

8. アウトリーチ(議題7)
  クライスト事務局長より前回の総会でも検討されたIPCCの広報戦略とそれに対する各国政府コメントのまとめを紹介した。
議論の中では、特に途上国へのアウトリーチの重要性や、実質的なアウトリーチ活動に際しては、各国内の組織の協力も必要であるとの意見が出された。また、第一作業部会共同議長のスーザン・ソロモン氏は、アウトリーチプロセスは実質的な活動の成果物から明確に切り離し、IPCCの完全性(Integrity)を確保する必要性があると指摘した。
基本的には、提案された戦略が広い指示を得ており、事務局は、本会合で出された意見を考慮に入れると述べた。

9. オブザーバー機関承認の手続きと方針(議題8)
 前総会から引き続きの検討事項である本議題について、事務局より、改定案と現在のオブザーバー組織についての情報を提示した。
一部の国から、どの組織でもフレキシブルにうけいれるべきとの意見がでたが、中国は、オブザーバー申請をする組織は、まず、その組織の帰属国の政府による承認を得るべきと主張し、サウジアラビア及びイラクも賛同した。これに対し、事務局より、もし、オブザーバー申請をIPCCが受諾し、帰属国政府が受諾しない場合は、IPCCもその申請は受理できないとの見解を述べた。(IPCCは全会一致が原則) 
モロッコは、現在オブザーバーステイタスを持っている組織を自動的に承認することに懸念を表明し、IPCCの活動にダメージを与えるような組織は認めるべきではないと述べた。
米国は、決定権は、IPCCビューローが持つべきであると述べ、オーストリアがそれを支持した。
また、何らかの理由で組織がオブザーバーステイタスを取り消されなければならない場合は、議長の裁量によってそれを行うことができるという案について、中国はこれを支持、英国も、我々はもっと議長の決定を信頼すべしと述べ、ベラルーシは、将来その組織がどういう方向へ進むのかも現段階ではわからないのだから、議長の決定にまかせてもかまわないのではと述べた。 それに対し、ケニアは、“その次の回の総会においてパネルが批准することを条件に、議長は、そのオブザーバーステイタスを保留にすることができる”という案を提案し、各国が合意した。
 最終的に合意された主な事項は下記のとおり:
 既にWMO,UNEP及びUNFCCCでオブザーバー資格をもつ組織は追加文書を提出することなくその組織が要請し、パネルによって受諾されたならば、IPCCオブザーバーとなれる。
 オブザーバー資格を希望する組織は、必要申請書類を提出しなければならず、その申請はパネルの全会一致により承認される。
 オブザーバー資格が何らかの理由で取り消されなければならない場合、その次の回の総会においてパネルが批准することを条件に、議長は、そのオブザーバー資格を保留にすることができる。

10. 各国温室効果ガス・インベントリーに関するIPCCタスクフォースの将来作業計画(議題9)
 平石タスクフォース議長より、今後の活動として、以下の案が提案された。
 IPCC Emission Factor Database (EFDB)の引き続き運営と、2006年ガイドラインのTier 1を実効するためのコンピューターソフトウエアの開発
 アウトリーチ活動として、2006年ガイドラインのよくある質問(FAQ=Frequently Asked Questions)を含んだパンフレットの作成、インターネット上での公開、トレーニングコースの開発 (あくまでも、コース開発に貢献するのであって、コースそのものを運営するのではない)
 専門家の更なる検討が必要なトピック;
・インベントリーに関する科学的知見が比較的初期段階である湿地帯、サヴァンナ、造成地といった地域
・排出権トレードといった他の排出量算定方法から得られたデータの利用
・地域的、化学や物理的な見地からの排出データの見積もりやグリーンハウスガス排出と除去の予測とインベントリーの相互作用についての方法論
 衛星とリモートセンシングの有効活用の方法
 上記計画案を検討する為の専門家会合の開催

これらの提案は、多くの国から指示を得た。計画されている専門家会合に招く専門家は、リモートセンシングやシナリオの専門家を入れるべきとの意見や、途上国は、不足している途上国のデータの配布や、その方法、また、キャパシティビルディングの必要性を強く訴えた。
また、議題4で採択された「2006年の各国温室効果ガス・インベントリーに関するIPCCガイドライン」作成などの活動に中核的な役割を果たした、各国温室効果ガス・インベントリー・プログラムのタスクフォース共同議長、それを支える専門支援室(TSU)さらには、このTSUに財政面も含めた全面的な支援を行なってきた日本政府に対して、賛辞と感謝が非常に多くの国々の代表から続いた。


11. 再生可能エネルギーに関するIPCC特別報告書についての提案(議題10)
  ドイツが提案し、オーストリア、ベルギー、デンマーク、ガンビア、ギリシャ、スウェーデン、オランダによって指示された、「再生可能エネルギーに関するIPCC特別報告書」の作成について、多くの国から賛同の意見が述べられた。一方で、サウジアラビアは、再生可能エネルギーだけをとりあげるのはアンフェアであり、石油や石炭といった再生不可能エネルギーのための排出ガス浄化先端技術(Clean advanced technology)も取り上げるべきではないかと述べ、中国も、再生可能エネルギーには関心があるが、特別報告書を作成するには、その研究がまだ未熟であり、また、財政的及び時間的な制約もあることを理由に難色を示した。米国も中国を全面的に支持し、これから、AR4統合報告書の作成や、AR5についての議論など、他に優先すべきことがある、また、再生可能エネルギーの中には原子力エネルギーあるが、まだ、報告書を作るまでに研究が成熟していないので、今回は、見送るべきではないかと述べた。
 エジプトは、エネルギー節約の観点から、エネルギー効率技術も含むことを提案し、ベルギーもそれを支持した。しかし、第3作業部会共同議長のディビッドソン氏は、エネルギー効率と再生可能エネルギーはかなり違うものであることを強調した。
 パチャウリ議長は、多くの国がドイツの提案に賛同の意を表明していることを理由に、2007年にAR4が完成した後、年末までのできるだけ早い時期に、本報告書作成の為のスコーピング会合を開き2008年後半の総会においてその結果を報告するように提案した。
スコーピング会合の経費について、提案国のドイツが、資金協力の意思を示したが、旅費支援については保留とした。一方、報告書作成自体に難色を示していた米国は、資金提供のみならず、参加自体にも消極的姿勢を示した。
最終的に、ドイツのみならず、賛同する他国も含め、旅費捻出の計画に責任を持つこととし、2007年末にスコーピング会合を開催することで合意した。

12. UNFCCCに関する事柄(議題11)
 IPCC事務局長クライスト(Renate Christ)氏および、UNFCCC事務局次長トールゲルッソン氏より、去年11月に開催されたSBSTA23、COP11及びCOP/MOP1 において議論し採択されたIPCCに関連する事項を紹介した。
SBSTAは、地球規模での気候変動の研究を触発し、途上国の研究への参加を促進するような研究ニーズを検討し始めている。また、COPは、IPCCの最新の知見をさまざまな活動の根拠として考慮していくことで合意している。例えば、  SBSTAは、「CO2 の回収・貯留に関する特別報告書」をIPCCが作成したことに感謝し、次回SBSTA24(2006年5月)においてCO2 の回収・貯留に関する理解を深める為のワークショップを開催することを合意、また、このワークショップでは、「2006年の各国温室効果ガス・インベントリーに関するIPCCガイドライン」も取り上げることとした。
 COP11は SBSTAに、“気候変動の影響、脆弱性、適応に関する5ヵ年作業計画”に向けて、2008年6月のSBSTA28において、更なる活動や適切なタイミングなどをIPCC第4次報告書からの最新の知見等を基に検討するよう要請している。  IPCC第3次報告書の考察を基に、農業と地域開発、交通を含む都市計画、エネルギー効率などいくつかのテーマについて今後のSBSTAにおいてワークショップを開催する為のリソースを SBSTAは事務局に要請している。

これらUNFCCCの決定事項について、ロシアより、本総会にて受諾された「2006年の各国温室効果ガス・インベントリーに関するIPCCガイドライン」は、UNFCCCプロセスに組み込まれるべきとの意見がでた。それに対し、トールゲルッソン氏は、本ガイドラインが、次回SBSTA24の議題にはいっていると回答した。

13. 進捗報告(議題12)
 各作業部会の共同議長より、進捗状況の説明がなされた。
第一作業部会
 第一次ドラフト (FOD)の専門家レビューでは、43の国及び国際機関より、540の専門家から17000のコメントが提出された。このコメント数は、第ゼロ次ドラフト(ZOD)の非公式専門家レビューのときの6倍であった。(全作業部会の中では群を抜いて最多)
レビューにあたり、WG1-TSUは、ウェブサイト上で、ドラフトへのアクセス、コメントの提出、及び700を超える引用論文へアクセスできるようにサイトを開発した。
 第二次ドラフト(SOD)の専門家・政府レビューが始まっており、2006年6月2日がコメントの締め切り。
 第4回執筆者会合は、2006年6月26日から28日までノルウェーにて開催され、第二次ドラフトのレビューコメントを精査する。
 政策者向け概要(SPM)の最終ドラフトの政府レビューは、2006年10月27日から12月8日まで。
 第一作業部会のAR4の承認は、フランス・パリにて2007年1月29日から2月1日に開催される第一作業部会会合において行われる予定。

第二作業部会
 FODの専門家レビューが、2005年9月から11月にかけて行われ、770の専門家から1155のコメントが出された。
 SODは2006年4月21日までに完成され、2006年5月26日に専門家・政府レビューの為に向けて準備が整えられているところである。
 第3回執筆者会合は2006年1月16日から19日にユカタン半島にて開催され、FODレビューコメントへの回答、SPMとTSのFODやSODの予定等について検討した。
 第4回執筆者会合は、2006年9月11日から14日に南アフリカにおいて開催予定。15日には、SPMとTSの執筆者チーム会合が予定されている。

第三作業部会
 CO2 の回収・貯留に関するIPCC特別報告書(SRCCS=IPCC Special Report Carbon Dioxide Capture and Storage)が2005年9月の第8回第3作業部会会合にて受諾され、IPCC第24回総会において承認されたが、その後、11月に開催されたCOP11/MOP1においてもサイドイベント等で紹介したところ、メディアからも反響があった。今後も引き続き、各種会合で紹介するなど、幅広く周知に努めていく。
 本報告書は、ケンブリッジ大學から出版されるが、同時に、インターネットやCD-ROM形態でも配布予定。
 FODの専門家レビューは2005年11月から2006年1月にかけて終了した。レビューの一環として、執筆者と産業界からの専門家との会合を2006年1月にケープタウンで開催した。このような会合は、IPCC歴史上初めての試みであり、両者が顔をあわせて深い議論を行い、その成果は、第3回執筆者会合に反映させることができた。
 SODは2006年7月24日までに作成され、専門家・政府レビューに入る。
 第4回執筆者会合は、2006年10月10日から13日ニュージーランド クライストチャーチにて開催予定。

統合報告書(SyR)
 本報告書のコア執筆者チームの氏名がIPCCビューローに提出されており、第1回会合が、3ヶ月以内に開催される、また30㌻位になることと報告された。(尚、日本からは、松野太郎氏(JAMSTEC/FRCGC特任研究員)と杉山大志氏(CREIPI主任研究員)が執筆者として任命されている。)

Task Group on Data and Scenario Support for Impact and Climate Assessment (TGICA)
 TGICAとWG1のモデルのデータの利用におけるPCMDIとの協力関係が順調であることや、キャパシティビルディング及び途上国・経済移行国で活用できる適切なデータプロダクツの開発推進を行っていることが報告された。

Emission Factor Database (EFDB)
 Editorial boardは、IPCCメンバー国から推薦された専門家で構成されるが、2005年10月にeditorial boardメンバーの推薦を呼びかけ、30カ国49専門家の推薦があった。その中から、EFDBを運営しているIPCC National Greenhouse Gas Inventories Programme (NGGIP)によって選出された35名のリストの報告が行われた。

14. IPCC委託条件の検討(議題13)
 2003年第14回WMO総会は、IPCCに対し、WMOとUNEPによって検討・承認されたIPCCへの委託条件につき検討し、期限は特に設けないが、その検討内容について、IPCCとWMO Executive Councilから、2007年5月の第15回WMO総会において報告して欲しい旨、提案してきた。
 現在、第4次報告書作成中ということもあり、適切な検討時期としては、第四次報告書完成後と考えられるが、第三作業部会の第4時報告書の受諾が、次回WMO総会に時期的に近く、検討時間があまりないというのが現状である。したがって、IPCCとしては、すべての第四次報告書が完成した2008年前半のIPCC総会において検討するのがのぞましいのではないかとChrist事務局長から説明および提案が出された。
 それに対し、中国は、レビューは必要であるが、やはり、AR4完成後、2008年に新しいIPCCビューローで検討し、事務局に報告するのが望ましいのではと述べた。オーストリアも、第4次報告書完成後を支持した。
 一方、スイス、英国、カナダ、ニュージーランド、ドイツ等の国々は、これに対応するための少人数でのチームを作り、IPCC議長と短期間に検討を行う方が適切との意見を主張した。
 ケニアは、レビューの際には、キャパシティビルディングについても考慮するべきとの意見を述べた。
 最終的には、以下の結論で了承された。

 少人数で検討チームをつくり、パチャウリ議長及び事務局とともに委託条件のレビューを行い、その結果を次回第26回IPCC総会にて検討。レビューはメールにて行う。
 次回総会にて承認された後、2007年5月の第15回WMO総会に提出。

15. その他審議案件(議題14)
 ナイジェリアから、会合中、様々な議題が何度も途中のコンタクトグループ等を挟み、中断したり、前後することもあるので、“決定”がどこまでいっているのかの進捗状況を、休憩時間にでもスクリーンに映すと良いのではないかとの提案があった。
 スイスからは、現在、GEOSS10年計画の実施についての紹介があり、この活動の成果は、今後の科学技術分野において、大変役に立つものと期待されているので、興味のある国は、参加してほしいとの呼びかけがあった。

16. 次回総会の時期と開催地(議題15)及び閉会(議題16)
 クライストIPCC事務局長より、今後のIPCC総会及び主な会合の開催時期と開催予定地について、下記のとおりアナウンスがあった。
  次回のIPCC第26回総会は、平成19年5月4日からタイのバンコクで開催。

各作業部会のAR4の政策決定者向けの要約(SPM)の承認と本文の受諾が審議される各作業部会会合は下記のとおり;
  第1作業部会第10回会合は、平成19年1月29日から2月1日 フランスのパリ
  第2作業部会第8回会合は、平成19年4月2日から4月5日 ベルギーのブリュッセル
  第3作業部会第9回会合は、平成19年4月30日から5月3日 タイのバンコク
 統合報告書の審議を行なうIPCC第27回総会は、平成19年11月12日から16日 スペインのバレンシア。本総会にてすべてのAR4が正式に採択となる見通し。

 パチャウリ議長は、今回のホスト国となったモーリシャス政府、IPCC事務局、各国参加者に感謝を述べ、午後5時47分、本会合は閉会した。

所感 (近藤)
 WG1にとっては、今回の会議の主要な議題は、新排出シナリオであった。結論的には、一方で、技術報告書を現在のAR4対応のビューローの任期中に(すなわち、2008年の春ごろと想定される、AR5へむけた最初の総会までに)作成し、既存の排出シナリオからベンチマークシナリオを選定して、モデルのランが遅くならないよう、予測モデルグループに実験を要請し、他方で、新排出シナリオ開発そのものについては、2007年の各WGによるAR4が完成後に(統合報告書の完成を待たずに)、関係者を招いて、IPCC会議を開催して論議を継続することになった。
近藤は、この議題に関するコンタクトグループの討論に最初の部分を除いて出席した(重複した場合本会議には秋庭が出席)。サウジアラビアが、B1A以外はまったく受け入れられないという見解に終始した以外は、討論はおおむね順調に進んだ。米国は、当初はかなり持論にこだわっていたが、後半は”In the spirit of compromise, …”という発言が多くなり、建設的になった。また、サウジアラビアも、全体会議での議事録に保留の立場であることを記録してもらうことで、採択拒否を取り下げ、コンタクトグループの結論が採択された。ただ、コンタクトグループの議論の中で、WCRP/WGCMのChairである、John Mitchellからの手紙に関して、その意義を理解していないある国の代表からは、一科学者の手紙に左右されるのはいかがかという見解が述べられたので、近藤から、彼は、モデル開発研究分野の大方の見解を代表するとともに、自身の専門性から述べているので、重要な参考資料として考えるべきであると反論した。また、開催が決まった、新排出シナリオに関するIPCC会議に関しても、当初明らかでなかったので、近藤からモデル開発グループの専門家の会議への参加を明記すべきだと主張して受け入れられた。
 上記とは別の議事において、一部の国の特定の参加者が、その国の背景や立場とは別に、個人的な偏執的見解や理解不足により、議事の進行を著しく遅らせる場面が今回も何回かあり、多忙な時間を割いて参加している国際会議において、非常に重要なかなりの時間を無駄な非建設的な過ごし方をせざるを得ないのは何とかならないかという感想は、何人かの外国の代表との個人的な会話の中で、意見をともにした。ただ、完全に悲観的にならずにすむのは大多数の参加者が何とか建設的に会議を進めようという強い意向が結局は働き、上記の理不尽な一部の参加者の異議などが出てもむしろ、それによって、間違いの無い隙の無い論理の展開した結論を導く方向に全体が働く点にあると感じる。
 今回非常に印象的であったのは、各国温室効果ガス・インベントリー・プログラムの活動に多大の支援をしてきている日本政府に対し、これまでIPCCの会議や関連の国際会議などでほとんど前例がないほど、極めて率直な感謝と賛辞が、途上国、先進国の別なく、いつ果てるとも知れないほど多数の国から述べられたことである。一国に対する異例の対応であるとともに、日本がこれまで、多くの経済援助をしながら国際会議で公式な感謝表明のされることが少なく過小評価されていると感じていただけに、特筆に価する。国際社会における日本のリーダシップということが第3期科学技術基本計画でも掲げられているだけに、いきなりその一端に遭遇したかの感があった。
以上
(報告:独)海洋研究開発機構 地球環境フロンティア研究センター 
特任研究員 近藤 洋輝・研究推進スタッフ 秋庭はるみ)

(別紙)

議題

1 開会
2 第24回総会の議事録承認
3 2006~1009年のIPCCの活動と予算
4 2006年の各国温室効果ガス・インベントリーに関するIPCCガイドラインの採択・受諾
5 IPCC排出シナリオに関するIPCCの今後の方針
6 IPCCビューロー及び各ビューローの選出に関する手続き
7 IPCCの広報戦略と広報活動
8 オブザーバー機関の受け入れに関する手続きと政策
9 各国温室効果ガス・インベントリーに関するIPCCタスクフォースの将来作業計画
10 再生可能なエネルギーに関するIPCC特別報告書についての提案
11 UNFCCCに関することがら
12 進捗報告
13 その他の審議案件
14 次回の時期と開催地
15 閉会


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