気候変動枠組み条約第10回締結国会議におけるサイドイベント開催報告

2005年1月7日

 2004年12月6日〜17日までアルゼンチン ブエノスアイレスのLa Rural Exhibition Centerにおいて気候変動枠組み条約第10回締結国会議が開催された。12月9日(木)13:00〜15:00まで、会場内Alerce(約140人収容)のサイドイベント会場において、文部科学省主催によるサイドイベント“Climate Change Projection by the Earth Simulator and Related Research Outcomes”が開催された。
本サイドイベントの趣旨は、文部科学省が行っている共生プロジェクトによる地球温暖化予測研究を通じて、地球温暖化に対する日本の取り組みを世界の政策決定者へ紹介することであった。具体的には、
  • IPCC第3次報告書でとりあげられた課題であるVulnerabilityに対してどこまで研究がすすんでいるのか、
  • その研究が、地球科学分野では世界最高性能といわれている地球シミュレータを活用しおこなわれており、特に地域気候予測においてその信頼性の向上が期待できること
  • それによって、IPCC 第4次報告書への貢献が期待できること、さらには、UNFCCCの究極の命題である温室効果ガスの安定化にも貢献しうること
をメッセージとして伝えることを主眼とした。
ハリケーン”Catalina”のシュミレーションを見せるJ.Marengo氏
 さらに、共生プロジェクトの国際的な共同研究の取り組みを、共生プロジェクト課題1−1の共同研究機関である英国気象局(UKMO)のハドレーセンターから、また、共生プロジェクト課題4で予測された南米でトロピカルサイクロンが、実際に南大西洋沖において観測され、ブラジル南部沿岸地域に多大な被害を与えた事例を、ブラジル国立宇宙研究所(INPE)の気象予報・気候研究センターから、そして、気候変動予測とその影響評価について、日本の国立環境研究所からそれぞれ紹介した。
 サイドイベント冒頭では、主催者である文部科学省研究開発局海洋地球課地球・環境科学技術推進室の水畑順作室長補佐より、開会の挨拶と、日本の温暖化への取り組みとして文部科学省が行っている共生プロジェクトの概要説明を行った。また、今回のサイドイベントの協力機関である独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の重冨徹調査役より、JAMSTECの概要説明とともに、地球環境フロンティア研究センター(FRCGC)がIPCCに貢献していることやJAMSTEC は地球科学研究分野では世界最高水準のスーパーコンピュータである「地球シミュレータ」の管理・運用を行っている等の紹介を行った。
温暖化が産業・生態系・人命に多大な影響を
与えていることを紹介する西岡氏
気候変動研究における日本と英国の連携を紹介するM.Collins氏
 引き続き行われた研究者による最新の地球温暖化研究の紹介では、地球環境フロンティア研究センター 近藤洋輝特任研究員が、“High-resolution coupled ocean-atmosphere modeling and global worming projection under scenarios”(解像度海洋大気結合モデルとシナリオに基づく温暖化予測について:共生課題1−1)、“Super high resolution global and regional climate modelings”(超解像度全球・地域気候モデリング:共生課題4)そして “Kyo-sei 2:Integrated Earth System Modeling”(共生課題2:統合次世代モデル)について発表を行った。
近藤特任研究員は、その発表の中で、日本で開発された、いくつかの高解像度全球モデル、タイムスライス法による超高解像度全球モデルを使い、全球の気候、地域気候、異常気象についての現在の再現シミュレーション、および将来の予測実験の結果や、気候変動の影響が生態系などの炭素循環により温室効果ガスの濃度にどのように反映されるかというフィードバックも考慮したモデル研究の状況を話した。そして、それらの研究成果は、IPCC第4次評価報告書に貢献するであろうと述べた。
共生プロジェクトの一つ20KMメッシュモデルで
台風のシミュレーションを見せる近藤氏

 財団法人 電力中央研究所の西村嘉晃上席スタッフは、“Multi century three member ensemble projections with the ES and climate response to stabilization and overshoot scenarios”(共生課題1−2)というタイトルで、温室効果ガスが人類へ危険な影響を与えないためには温室効果ガスの濃度安定化のレベルはどのくらいかを主要なテーマとして、米国大気科学研究センター(NCAR)のモデルに基づく予測実験を行った結果を紹介した。
英国ハドレーセンターのMatthew Collins博士は、共生プロジェクト課題1−1をはじめとした日本と英国間で、比較実験などを通して気候変動研究における連携を行っていること、そして英国の最新の研究の概要を紹介した。
 ブラジル気象予報・気候研究センターのJose Marengo博士は、South Atlanticにおいてはいままでに起こったことがない“Catarina”と呼ばれるトロピカルサイクロンが、2004年3月にブラジル南部に上陸し、多大な被害を与えたが、これは、気候変動度の増大による異常気気象のひとつなのかもしれないとの見解を提示した。
独立行政法人 国立環境研究所の西岡秀三理事は、日本における全般的な温暖化研究の紹介を行うとともに、温暖化が、様々な産業、生態系そして人命に多大な影響を与えていることを紹介した。特に、摂氏2度の温度上昇を避けるのに、厳しい温室効果ガス排出制限が要求されるであろうことを強調した。
最後に、聴衆との質疑応答を行った。

会場からの質問に答える西村氏
会場からの質問に答える近藤氏

Q1: 紹介された日本のモデルシミュレーションで、海洋生態系のシミュレーション、特に産業でいえば、漁業に関してはおこなっているか?また、地球温暖化の影響を受けやすい島や高山の生態系についてはどうか?
A1(近藤): 現在、生態系の予測に向けて、一般的な生態系モデルを含む統合化モデルの研究開発をおこなっているところであるが、漁業、高山・島の生態系など特定の分野への影響は、影響評価研究であり、この課題では行っていない。むしろこの成果を受けて行われる性質のものと理解している。
Q2: 地球シミュレータはNo.1ではなくなったようだが、今後の更新の予定などはあるのか。
A2: 5年後にどのようなスーパーコンピュータがこの世に存在するか、誰も正確には予想できないであろう。 我々は進歩を続けるつもりでいる。
Q3: 今後は、トロピカルサイクロンが20%減少するとのことだが、その原因は何か?また、減少することによる経済効果は?
A3(近藤): 温暖化すると大気中の水蒸気量が増加し,その結果大気の,Stabilityがやや増加する結果、発生頻度は減少する。ただ、その強度は増す。
(西岡):
日本においては、昨年3つの大型台風が上陸し、その被害総額はUS$ 2billionであった。日本の場合、産業地帯が、沿岸沿いに集中しているので、このような金額になったと考えられる。
Q4: 途上国との連携は?たとえば、途上国地域でのシミュレーションや、それを行うための、キャパシティビルディングなど。
A4(近藤): 現在は、グローバルで20KMメッシュなので、ある特定の地域における再現実験や予測実験の計算は、世界の他の地域の詳しい結果も出している。それについて他の地域に関して解析してもらえば、モデルの改善にもなる。ただ、膨大な結果であり、どのようにデータを切り出して使ってもらうかについては、技術的に容易ではないが、検討中である。途上国との連携については、望ましいが、現在は確実なファンドがない。将来は検討する可能性がある。
(Collins):
ハドレーでは、比較実験を行っている。詳しくは、GCOSのサイドイベントで紹介する。
Q6: 長期の予測実験で北太平洋北部での沈み込みが弱まるのはなぜか。また、京都
議定書では全体で5%のCO2削減を目標としているが、実際にそれはできるのか?
A6(西村): 大気の温度と海水に流れ込む淡水の増加が考えられるがまだよくわかってない。

世界各国の参加者たちからも活発な質問がでた。

 閉会後も、各発表者に個別に質問やコンタクトをとる参加者もいた。中でもWorld Bank のMr.Walter Vergaraを仲介役として南米のベリーズとコロンビアの政策担当者から共生課題4の20KMメッシュの全球超高解像度モデルによる地域気候予測に関心があり、今後は、提携を結び、是非、本国から、気象研究所に人を派遣してトレーニングをうけさせたいとの申し入れがあった。本件に関しては、近藤特任研究員が気象研究所に伝えることとなった。
以上
(報告:秋庭はるみ 地球環境フロンティア研究センター)
 

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